最近の粗大ゴミの傾向

役員間での対立から、最高責任者のT取締役がしかるべき対応をとってくれないままだった。 新プロジェクトの消滅とともに、私は8月に初代銀座支社長となった。
しかし、実は 年の初めごろから会社の業績は悪化していた。 S生命だけではなく、W年9月のN産生命の破綻を皮切りに、中堅生損保、証券会社が次々に破綻する激動の時代に入っていた。
保険業界へ外資系企業が参入し、営業スタイルは変化し、競争が激化していた。 銀座支社も契約金額が毎月前年実績割れした。
解約が相次ぎ、新規契約は取れなかった。 業績が落ち込むとともに、社員の顔から笑顔が消え、内部亀裂が生じ、お互いに責任を転嫁し合い、他人の悪口が増えた。
誰もが業績低迷の犯人探しにやみつきになっていた。 営業員は、所長が悪い、支社長が悪い、役員が悪い、会社が悪いと言い、会社側は、営業員が悪いと責任のなすり合いを演じていたのだ。
私はそうした状況でも、どうにかして成果を出そうと思い、これまでの営業方法以外に、新しく営業員自体のスキルアップが必要だと考えていた。 そのために、目標管理や人材育成のセミナーを受けたり、法人契約獲得の方法、モチベーションアップの方法、保険税務の知識、タイムマネジメントなどあらゆる研修に参加し、ファイナンシャルプランナーの資格を取ったりして、何とか突破口がないかと思案を続けていた。

暗中模索をしていた年末、私が尊敬している研修会社の社長から、たまにはゆっくり話でもしないかと誘われた。 この社長は、福岡勤務時代にとても役立つ研修をしてくれた人物である。
自分の生きる目的、人との関わり方、ビジョンの持ち方を学ばせてもらった人でもあった。 仕事のグチにならないように気をつけて話していたが、言葉の端々から私の心情を読みとれたのか、「ところで、コーチングって知っていますか?」と問いかけられた。
私はスポーツのコーチのことですか、と見当外れの答えをしたのだが、コーチングは「部下及びクライアントの良いところを伸ばし、成長させることができるスキル」だと端的に説明してくれた。 業績を上げられない部下をどうすればよいのか悩んでいる私の現状を見抜いて、そのコーチングを受けてみたらどうかとアドバイスをしてくれたのである。
 万円という高額な研修費を払う価値があるのかどうか疑問でもあったため、その場は話を聞くだけにした。 しかし、業績アップに繋がりそうなものは、片端から手をつけていた当時の私は、早速書店に飛び込み、コーチングに関する書籍を買いあさって、コーチングの研究をした。
そして、これからの部下との関わり方はこの手法だと直感し、支社を成功に結びつけるための先行投資と判断した。 そしてすぐにコーチングの研修に参加の申し込みをしたのだった。
これが私とコーチングの出会いである。 担当した支社の業績が振るわない私は、コーチングと出会うことで、まず自分自身を見つめ直すことができた。
元来、せっかちな私は、専属のコーチを招いてコーチング学習のスピードアップを図っていった。 コーチングを学べば、学ぶほどその魅力に取り付かれ、「認定コーチ」という資格を目指すまでになっていた。
そして、覚えたてのコーチングを使って、部下ににわか仕込みのコーチングを試してみるまでになっていた。 しかしコーチングの形だけのスキルを身につけても、コーチングはうまくいかない。
コーチングはスキルだけではないことをすぐに思い知る。 私が受講したコーチングの研修を主催していたのは、日本で最初にコーチングを紹介した会社だった。
コーチングの研修は、普通の研修とはまったく違っていた。 研修というと「先生」役の講師がいるのだが、コーチングでは、それをリーダーと呼ぶ。

しかし、先生と大きく異なるのは、リーダーの役割は答えを教えることでなく、あるテーマについて参加者に考えさせ、意見を引き出し、積極的な発言をさせることだ。 そして、コーチングを受ける側は「生徒」ではなく「クライアント」と呼ばれる。
研修は クラスで構成され、一つのクラスごとに「聞くこと」、「効果的な質問」、「フィードバック・提案」などのテーマがある。 クラスは1週間に1回、月間4回で終了するシステムになっており、それを クラス受講して卒業する。
最短で卒業するには、1カ月に2クラスを受講しても 力月かかる。 また、集合研修ではなく、電話で行えるのもコーチング研修の特徴だ。
例えば、「聞くこと」というクラスでの電話研修はこんな具合である。 リーダーから、最初の質問が始まる。
「部下からみて、上司が話を本当に聞く、とはどんなことだと思いますか?」「しっかり聞いてもらうことだと思います」「しっかり聞いてもらった、ということはどんな行動でわかりましたか?」「私の話に身を乗り出して聞いてもらったり、うなずいて聞いてもらったりしたときです」「その時はどんな気持ちがしましたか?」「安心して気持ちよく話ができました」「その後、あなたはどのような行動をとりましたか?」「仕事に前向きに取り組みましたね。 上司に聞いてもらい、心にゆとりができたのです」このような研修が毎週、繰り返される。
常に質問を受け、考えるという習慣を身につけさせることが重要なので、リーダー一人につき参加者は別人以内が限度だ。 こうして、コーチングを学んでいくうちに、コーチングは、その良さや現実にコーチングが機能していることを実際に実感しなくては、自分自身のスキルとして使えないことを痛感した。
そして、早くこのコーチングを自分のスキルにしたいと考え、私の都合に合わせて相談できる私自身の専属コーチ(パーソナルコーチ)を探すことにした。 私は、いつもわれわれにリーダーとして接しているプロコーチのS氏に専属コーチになってくれないかと頼んだ。
S氏は人間的に深みもあり、年齢も近く、知識も豊富で、コーチとして申し分なかったからだ。 そこで、まず3カ月間、週1回、電話で 分間行うことを話し合って決めた。

コーチ料は月4万円。 安い出費とは決して思わなかったが、これでコーチングのやり方が少しでもわかり、業績が上がるなら安いものだ、と割り切って決断した。
こうして、コーチング研修に加えて専属コーチからコーチングを受けることで、私はコーチングについて綿が水を吸収するように、猛烈なスピードで、学んでいくことができた。 自然とそのスキルが身についてゆき、営業現場でそのスキルをスキルとして自覚することもできた。
最初のS氏とのコーチングについて、私は鮮明に覚えている。 この時私はS氏に、現在自分が置かれている立場や環境などを話して、最近課題となっている職場の人間関係や業績不振の件についてコーチを受けるつもりだった。
最初はグチから聞くこと、相づちをうつこと私はこの調子でしばらく、グチを言い続けたのだ。 私は、普段、これほどグチっぽい男ではない。
では、なぜ、次から次へとグチが出てしまったのか。 実は、「聞くこと」、「相づちをうつ」というコーチングでは非常に重要なスキルをS氏が使っていたからなのコーチングでは、相手の能力を最大限に「引き出す」ことが最も重要な技術で、そのためには何よりも「聞く」ことができなければならない。
さらに、相手の言葉に対する反応「ではHさん、今日はHさんが日頃感じていることについて、話してみてください」「いやあ、会社の数字が悪いんですよ。 もうひどくて。

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